YAMAPユーザーをはじめとした登山者が植物を愛で、保護に関心を寄せる一方、全国各地の山野草が絶滅の危機に瀕しています。
京都大学教授(環境学)の瀬戸口浩彰(せとぐち ひろあき)さんは「状況が深刻な絶滅危惧種の情報は隠して保護すべきではあるが、山野草を鑑賞する楽しみを奪わないためにも、リスクの高いものと低いもので対応を分けるべき」という考えをお持ちです。
希少植物の保護のために登山者がすべき行動について、国内で保護が進まない制度的な問題点や盗掘の実態とともにお聞きました。
2024.07.05
YAMAP MAGAZINE 編集部
──瀬戸口先生はご著書で「『山採り』という文化は世界的に見て日本と中国ぐらいにしかない」と書かれていました。なぜ欧米には山野草を採取する文化がなく、日本では今も続いているのでしょうか。
瀬戸口:ヨーロッパや北米などでは、約2万年前の旧石器時代(最終氷期最盛期)から約1万5千年前の日本の縄文初期ごろまで、地表の大部分が厚い氷河に覆われていたため、そもそも山野草の数が少ないのです。
ミュージカル映画の名作『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)で歌われたエーデルワイスの仲間の種類(変種を含む)は、日本国内には約11種類もあります。しかし、映画の舞台であるヨーロッパアルプスには、たったの1種しかありません。
日本に開国を迫ったペリーは植物の採取、研究も目的にしていたのですが、上陸した際に、慎ましい生活をしている庶民が園芸を楽しんでいる様子を見て驚いたことを日記に記しています。
実際、江戸時代には、ちょっとした路地や長屋の入り口に植木鉢を並べる習慣があり、カンアオイやテンナンショウ、フウランなどが栽培されていました。
フウランは着生ランで、徳川十一代将軍家斉が庭で栽培していたため、大名たちが競って野外で採集して珍品を将軍に献上していたほどです。
東京には今でも、浅草寺の境内で行われる「ほおずき市」や入谷の「朝顔市(朝顔まつり)」といった、観賞用の植物の露天が出るお祭りがありますよね。そういう習慣は、江戸時代からすでに庶民化していたんです。
──里山のある地方部で山菜やキノコを採る習慣があったことは理解できますが、江戸時代には鑑賞用の園芸文化が都市部にあったのですね。同時期のヨーロッパでは、どちらかといえば上流階級のたしなみという感じだったのでしょうか。
瀬戸口:そうですね。イギリスはイングリッシュガーデンで有名なように、園芸用の様々な植物を寄せ植えしたりアレンジしたりして庭を競い合います。ヨーロッパの人たちはどちらかというと、品種改良をした上で庭に寄せ植えしたりして、自然な趣を出しています。バラの品種改良などがそうですね。
──近代登山の歴史は150年ぐらいです。それ以前には、森には魔女や魔物が棲むような場所として、あまり人が近づかない場所だったと聞きます。そうした欧州の自然観も関係しているのでしょうか。
瀬戸口:もちろん、一神教のヨーロッパと、アニミズム的な価値観や修験道のある日本では自然への見方が異なります。
日本でいえば、山はほとんどが信仰の対象。信仰で登る人や山伏たちが、その道すがらで薬草を摘んで生活に用いていたんです。
例えば、中央アルプスの木曽駒ヶ岳の山麓には養命酒の本社工場があります。その理由は、創始者が木曽駒ヶ岳山麓の薬草を使って養命酒を作っていたからなんです。養命酒に限らず、日本ではそうやって山で薬を調達して、麓に持ち帰って使う文化があり、自然なことでした。
──有識者の間でも、「業者による盗掘は現在ではほとんどない」という意見もあります。先生は職業柄、業者や愛好家ともつながりがあるとお聞きしました。実際はどうなのでしょうか。
瀬戸口:相変わらず、山採りしたものを販売している山野草業者はいます。業者に持ち込む「採り子」と呼ばれる人たちがいるんです。山に精通していて、何がどこに生えているかをよく知っています。
例えば業者が、シシキカンアオイを何個、フクエジマカンアオイを何個と頼むと、本業のかたわらに山野草を採ってきて業者に渡すようなことが、今でも行われています。
──山野草好きな人が山で見つけたものを持ち込むのではなく、業者が発注する仕組みがあるのですね。
瀬戸口:業者は、希少な野生生物の保全のための措置を定めた「種の保存法」(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)に違反するリスクもあるため、できるだけ店に置くのは最小限に抑えているんです。
私が入っている山野草の会には、そういった情報がよく寄せられます。環境省本省の希少種対策室にその情報を伝えると、彼らは山野草業者に直接電話で確認してしまうんですね。
「フクエジマカンアオイを採っているという情報が寄せられたんですが本当ですか?」と。法律違反ですから、イエスと言うわけないですよね。
業者は、「うちはエビネの専門店です」と返答して、お店の端に置いていたフクエジマカンアオイを隠してしまいます。そして採り子さんにもしばらくは大人しくしてもらう。長崎県の地域で実際にあったことです。
──ネットでの売買だとすぐ足がつきそうな気もします。愛好者の仲間内などで入荷情報のやりとりがあるのでしょうか。
瀬戸口:両方ですね。某大手フリマアプリの場合は、買う人と売る人が匿名になるため特に危ないです。会社のスタンスとしてはまともに取り合ってくれません。
ヤフーのオークションサイトに出品されるものに関しては、ヤフーが自分たちでチェックしていると 聞いています。ただ、「チェックしきれない部分もあるため、指摘をしてもらえると助かる」とも言っていました。実際に通報によって取り下げられた事例はいくつもあります。
──山採りをする人は、登山GPS地図アプリの情報をヒントに探しているのでしょうか。
瀬戸口:昔から盗掘はあって、登山アプリができたことで盗掘が増えたとはいえません。山採りをする人が「便利だ」と言って使っている話は聞いたことがあります。確実にアプリで検索はしていると思います。
山採りをしている人は、基本的には職業を持っている人が多いです。例えば五島列島の福江島でカンアオイを盗んでいる人は、あそこの職場で働いている人だ、と個人が特定されています。
福江島は海釣りに行く人が多いため、郵便局に魚を送る発泡スチロールの箱が売られているんです。それに植物を詰めて、長崎の山野草の店に送ったりするわけです。狭い島なのでみんな知っているんですよ。
──そこまでしているにもかかわらず取り締まれないのはなぜでしょうか。環境省の仕組みや人材不足が問題なのでしょうか。
瀬戸口:希少な野生動植物のうち、届出をすれば商業的に繁殖できる「特定第一種国内希少野生動植物種」というものがあります。ちゃんとした山野草の店は、環境省から交付された免許を掲げ、これらを売っています。
お客さんも、基本的には山野草が好きで、保護に関心のある人が行くわけです。店で山採りをしたものだと明らかに分かるものを見つけると、我々に教えてくれます。
ですが先ほどお話した通り、環境省に通報すると、本省の方が直接業者に電話をかけるという対応で終わってしまいます。
──環境省からの連絡は、少しは効果があるのでしょうか。
瀬戸口:罰則の規定が懲役だったり、罰金の金額が大きかったりするために怖いと感じる人はいて、抑止効果はあると思います。法律なので都道府県の警察は動けます。
ひどい場合には見せしめ的に摘発することはあるんですが、植物の場合にはあまり事例がありません。動物や鳥の場合は、市民も共感しやすいので摘発されることが多い印象です。
──先生は、植物の調査員自体が高齢化で減っているという問題を指摘しています。
瀬戸口:私は京都に事務局がある「みねはな会」という植物の愛好家の会に入っていますが、高齢で亡くなられる方が増えています。
ほかの山野草同好会でも同様かと思いますが、活動できない会員が増え、解散する愛好会が全国で増えています。
日本に2誌あった山野草の雑誌も、2年前くらいに1冊は廃刊になりました。山野草に興味を持っている人自体が減少していることも確かです。
環境省のレッドリストなどを調査する際、基本的にはこういう愛好家の方たちが現場に入りますが、そもそもマンパワーが不足しています。それに加えて予算の問題もあり、善意にたよっているのも現状です。
レッドデータブックの更新をするにあたっての仕組みを申し上げますと、私が所属している「日本植物分類学会」に予算が下り、その予算を使って、各都道府県の協力者にチェックをしてもらうことになっています。実情は、ガソリン代などの実費しか出せません。
──環境省の絶滅危惧種の植物に対する意識は、動物に比べて低いように感じます。予算面なども含めどのように感じられますか。
瀬戸口:希少種保全に使う予算の割合は、哺乳類と鳥類、爬虫類、対植物でいうと、およそ9対1ぐらいです。
例えば、環境省直轄の保護増殖事業のセンターの場合だと、佐渡島にある佐渡トキ保護センターや、沖縄のヤンバルクイナの保護施設(やんばる野生生物保護センター)、対馬のツシマヤマネコの保護施設(対馬野生生物保護センター)、西表島のイリオモテヤマネコの保護施設(西表野生生物保護センター)などがあります。
そのほか、兵庫県豊岡市のコウノトリ保護増殖センターのように、県レベルで希少種対策に取り組んでいる場合もあります。
これだけの数の直轄事業を運営しているのですから、数億単位の予算が必要なことは容易に想像できます。
一方で、植物の直轄保護施設はひとつもありません。動物には億単位の予算が恒常的に充てられているのに対して、植物にはゼロ円という、極めて偏った予算配分になっています。
──植物よりも動物に多くの予算が割かれてしまうのはなぜでしょうか。
瀬戸口:保護の面でいうと、環境省は動物と鳥が大好きなんです(笑)。
世界自然遺産の小笠原の場合は、哺乳類はオオコオモリしかいないため、それを保護すると農作物に害がでます。
その代わり、個体数が減少したオガサワラカワラヒワやアカガシラカラスバトという鳥の保護増殖に莫大なお金を使っていますが、植物にはお金はあまり使われていません。
──植物に予算が使われないのはなぜでしょうか。
瀬戸口:環境省を国民の皆さんに高く評価してもらうために、国民受けのいいことを優先して行っているんです。
分かりやすく例えると、NHKで、世界中の生き物の生態を追う「ダーウィンが来た!」という人気ドキュメンタリー番組がありますよね。取り上げられる比率でいうと、植物はほぼなくて、動物や爬虫類が多いんです。
番組の制作会社の方と話したことがあるんですが、プロデューサーからは「親子愛や兄弟愛を描いて必ずストーリー仕立てにしろ」と言われるそうです。環境省も、同じような理由だと推察されます。
──確かに、例えばテンナンショウ(※)のストーリー仕立てを作れと言われても、なかなか難しいですね。知らず知らずのうちに、われわれがメディアの影響を受けてしまっているんですね。
※日本全国に広く分布するサトイモ科の多年草。性転換をする植物として有名。漢方の「天南星」として薬用とされる。コバエ退治のための芳香にも用いられている。
瀬戸口:ただ、世界自然遺産には、IUCN(国際自然保護連合)という研究機関が定期的に調査に来ています。一昨年が知床と白神だったので、そろそろ小笠原に調査団が来る予定なんです。IUCNは、植物の多様性などを重要視して小笠原を世界自然遺産に指定した経緯があります。
しかし、現状は絶滅しかけている種がたくさんあるし、外来種の駆除も全く進んでいません。IUCNは厳しい評価機関なので、ひょっとしたら小笠原諸島は危機遺産*に指定されるリスクもあると思っています。そうなると先進国では初になります。
*武力紛争、自然災害、大規模工事、都市開発、観光開発、商業的密猟などにより、その顕著な普遍的価値を損なうような重大な危機にさらされている世界遺産
──日本の自然保護の法整備や、監視の現状をお聞かせください。
瀬戸口:環境省が音頭をとって作ったもので、絶滅危惧種とは別に、国内希少野生動植物種には「種の保存法」という法律があるんです。
これは条例ではなく法律なので、国会の衆議院と参議院を通っています。対象の植物を許可なく採集したり販売したりすると、法律違反となり、その時点で懲役または逮捕になります。
そうやって守ってはいるのですが、実際には現場ではパトロールも全くできていないし、販売の現場を抑えることも難しいため、法律で威嚇をしている状態です。
──国内希少野生動植物種の設定基準は、人間の影響だけに限ったものという理解でよろしいんでしょうか?
瀬戸口:そう明文化されています。要するに人間が採集するとか、または、例えば土地の開発で埋め立てをすることにより海岸線の植物がなくなってしまうとか、何らかの人間の影響によって減っているものを設定しています。
──「種の保存法」はできたけれど、人材や制度、予算なりが追いついていないため、パトロールもできず、希少植物や絶滅危惧種が増えてしまっているのでしょうか。
瀬戸口:そうですね。私は植物調査をやるために、アメリカの国立公園の山にも入るんですが、もちろん事前に申請をして、許可証を持って入ります。そこで仲間と植物採集をしているとパトカーがやって来たんです。
アメリカの国立公園ではパークレンジャーやボランティアの人が多く働いていて、拳銃を携行したパトカーが周回しています。挙動不審者がいると自然保護官のパトカーが来るんです。「手を挙げて車の屋根に付けて足を開け」と言われました。
──海外の事件映像やドラマで見るような感じですね。
瀬戸口:本当にそんな感じなんです。ポケットをチェックされて、許可証の確認などをされます。アメリカではパトロール体制がきちんとしていて、ボランティア含め人数が多いので管理ができています。
一方で、日本は自然保護官(レンジャー)の数がすごく少なくて、そのほとんどが事務所で書類書きをしています。辺ぴな田舎でも、朝8時ぐらいから夜の11時ぐらいまで事務所の電気がついてます。霞が関で働いているのとほぼ勤務時間は変わらないんです。
フィールドが好きで自然保護官という仕事を選んでいるのに、実際に就いてみるとオフィスワークや会議が多くて、アメリカみたいにパトロールに行く人がほとんどいない現状があります。
──瀬戸口先生が特に注視している、危機的状況の希少種や山域はありますか?
瀬戸口:例えばユリ科のコバイモです。日本は山が険しく川も多くて地理的な障壁が大きいため、山ひとつ越えると同じ花でも種類が変わるんです。
そのために地域性が強く、ホソバナコバイモやカイコバイモなど、地域ごとに名前をつけられたものが園芸用でたくさん流通しています。いろんなキャラクターを集める収集家がいるように、変異する種ばかりを集める愛好家がいるんです。
いろんな種類があって、リュックに入るくらいのほどよい大きさで、浅い場所に球根があるため、少し掘り起こすだけで採ることができ盗みやすいんです。しかもユリ科は、種ができて開花個体に育てるまでに年数がかかるため、手っ取り早く山採りをしてしまうんですね。
できればコバイモのグループは、YAMAPの情報から抜いていただくと助かります。
また、危機的状況の山域としては、都道府県レベルでは「すべて」といえます。日本列島は南北に長くて、様々な植物が気候や標高に合わせて住み分けているからです。
逆にいえば、私たちはそれだけ、多様性に富んだ国土にいて、色々な景観や植物を楽しむことができる恵まれた環境にいるわけです。将来の世代にも、同じ山の景観をつないでいきたいですね。
──YAMAPユーザーの中には、悪気なく希少種の情報をアップしたり、植物を採って帰ってしまったりする人たちもいると思われます。
瀬戸口:山登りの楽しみの一つは草花だと思うんです。草花を鑑賞する楽しさを奪いたくないという思いは強くあります。
YAMAPを使って登山をしている方たちの大多数は、写真を撮ったりする程度だと思います。そういう方たちの楽しみを奪って、がんじがらめに規制をかけるというのも好みません。
「この植物は載せないようにする」ということではありません。イメージとしては、注意が必要な植物の場合は、その情報を載せようとすると、「この植物は採集されやすい可能性のある種です。記録にあたっては状況をよく見てご判断ください」という旨の表示が出てくる。
掲載するかしないかは本人に任せるというふうに、まずは注意喚起するような緩い形でスタートできるのが理想です。
──絶景に興味があっても、植物にはそこまで興味がないという登山者もいます。そうなると、希少植物に対する意識も低くなってしまうので、その魅力をもっと伝えていく必要がありますね。
瀬戸口:植物の魅力はきれいなだけではありません。生き延びるために環境に合わせて激しく進化しており、それを知る楽しみがあります。
分かりやすい例でいうと、同じグループの植物の間でも、種を運んでもらうためにハチに飛んで来てほしければ、ハチが一番認識しやすいブルーになったり、赤になったりするんです。
逆に夜、蛾に飛んで来て欲しいものは、白くなったり、夕方から甘い香りを出したりするんですね。
どこにでも生えているササにしても、チマキザサは葉に毛がないため、昔からちまきや笹団子、お麩を包むために使われていました。昔から人々の生活に使われてきた植物もたくさんあります。
そういった生態の不思議や、人間との関わりのストーリーも伝わっていけば、関心が集まるのではないでしょうか。
人間のコミュニケーションも同じで、名前を知っていた方が関心を持ちやすいし、その人の好きなことや嫌いなことなどを知ると、さらに人間関係が深まっていくこともあるでしょう。それと同じですよね。無関心が一番怖いです。
──希少植物の保護とは、生物の多様性を確保していくことになると思います。なぜ山の中で生物の多様性が必要なのか、あらためて教えてください。
瀬戸口:特に都市部では、私たちが子どもの頃から見てきた植物の種類が変わってきています。ほとんどが外来種に置き換わっているんです。
今話している京都大学のすぐ横には鴨川が流れているんですが、河原を歩くと、子どもの頃に生えていたオオバコが、今は北米原産のヘラオオバコに変わっています。
在来種とされるイヌノフグリは、日本の植物分類学の父・牧野富太郎が名付けたオオイヌノフグリに置き換わり、これがさらに別の外来種であるヨーロッパ原産のタチイヌノフグリにいつのまにか変わっています。
私たちが生活している街は、街路樹と外来種で埋まっているんです。ただ、よく観察しないと分かりません。緑で覆われてさえいれば街はきれいだと錯覚を起こしてしまうんですね。
私たち人間がこの日本列島に住むよりもずっと前から住んでいた植物たちが今、加速度的に数を減らしています。
それに比べて山の植物が大切なのは、在来種がまだ残っているところです。こういった現状について、まず関心を持っていただくことが必要だと感じています。
今、自分たちが登ってきた山で見た植物は、大部分が日本在来で、そういったものを自分たちは楽しんでいることを知ってもらいたいです。
そうしたことを繰り返していくことで、次の若い世代の人たちが植物に関心を持ってくれたり、景色だけの写真を撮っていた人が植物も撮るようになったり、山の楽しみ方に植物を観察することを加えてくれるようになればいいですね。
──YAMAPのユーザーさんが、単に植物を見るだけではなくて、もう一歩踏み込んで観察をし、それを報告する。そして研究にフィードバックできる仕組みがあるといいですね。
瀬戸口:いろんな植物の情報が集約されて、大きなデータベースになっていくというのが最終的な目標としては理想だと思います。ただし今の倫理観だと、植物によってはその情報を元に盗掘されてしまうものも多々あるとみられるのが現状です。
いくつかの植物に関しては扱いに気をつけていただきつつ、もっと自然保護や楽しみ方についてポジティブにアプリを上手に使って、みんながハッピーになれる態勢になれたらいいですね。
YAMAPというアプリは、大きく登山を変えたと思っています。さまざまな人の登山体験が集合知になるとともに、どれだけ多くの人が安全に登山を楽しむことができたかと考えると、このアプリの貢献は非常に大きいと思います。
関連記事を読む:盗掘より深刻なシカ食害|矢原・九大名誉教授に聞く、山の希少植物の現状