ゴルフや飲み会とは違う、登山の特別なつながり|登山部インタビュー・株式会社オカムラ

登山を始めるきっかけで多いのが、「職場の仲間に誘われて」というパターン。仕事とプライベートを分けたいという人もいる一方、なぜ同僚たちと行くグループ登山が増えているのでしょうか。そこで、登山コミュニティをもつ企業の登山部員たちに、心身のリフレッシュだけではない、グループ登山の魅力を伺う「登山部インタビュー」連載をスタートしました。

第八回は、スチール製のオフィス家具製造をはじめ、オフィス空間などのトータルプロデュースを手がける株式会社オカムラ(神奈川県)。同社で、オフィスデザインや設計を行うデザイン室室長で、登山イベントを企画している上妻(こうづま)さんにお話を伺いました。

上妻さんご自身も、お取引先や家族から誘われたことをきっかけに登山に魅了された一人。その経験や喜びを伝えたいという思いから、周囲の人を山へ誘っているのだそう。今回は、「ゴルフや飲み会などにはない」という登山のコミュニケーション手段としての有用性やその理由、同僚を山へ誘うコツについて伺いました。

2025.02.01

YAMAP MAGAZINE 編集部

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< 話を聞いた人 >
株式会社オカムラ
パーパスである「人が活きる社会の実現」に向け、「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」をミッションとし、オフィス・教育・医療・研究・商業施設、物流センターなど、さまざまなシーンにおいて、クオリティの高い製品とサービスを提供する。企業価値のさらなる向上と社会課題の解決に取り組み、すべての人々が笑顔で活き活きと働き暮らせる社会の実現を目指す。

https://www.okamura.co.jp
上妻さん:大阪勤務・オフィスデザイナー

自身の体験を活かした、画期的なコミュニケーション

── 上妻さんご自身が登山を始めたきっかけを教えてください。

上妻さん:福岡勤務をしていた頃、お取引先の会社の登山部の活動にお誘いいただいたのがきっかけでした。その登山部は、ただ登山をするだけではなく、必ず下山後の温泉と飲み会までセットで行程が組まれていました。

ほかにも、山頂で大きな鍋でキムチ鍋をしたり、下山後はカキ小屋に寄って海と山を両方堪能したり。楽しみ方がすごく自由で、企画自体がとても魅力的でした。結果、山も一緒に好きになっていき、ハマっていったというような流れでしたね。

── 上妻さんが、会社の同僚や仲間を山に誘う理由はなんですか?

上妻さん:いちばんは、やっぱりコミュニケーションです。その手段としての「山」ですね。私自身が感じた、登山とその周辺を満喫する遊び方の楽しさ。これをみんなに体験して欲しい気持ちもあって、次第に社内の仲間を誘って登山をするようになっていきました。

私は転勤が多いので、これまで東京、福岡、広島、大阪とずっと住む場所を転々としているのですが、異動のたびに各地で登山愛好会のようなものに参加したり、作ったりしながら日々過ごしています。

▲眺めの良い稜線歩きが楽しめる広島の「雲月山(911 m)」にて

福岡の登山コミュニティはもう15年以上も続いていて、毎年必ず一度は登山をしています。福岡で登山が好きになった社員は、九州で登山のイベントがあると聞くと、どこに異動していても集まってきてくれるんです。噂を聞きつけた他の拠点からの参加者もいます。異動した先でも登山を続けている人がほとんどで、先々でまた登山を広めてくれている。じわじわとコミュニティが広がってきています。

▲九州エリアで開催されている年に一度の登山イベントにて。長崎県普賢岳(1,359m)

── なぜ、コミュニケーションの手段として「山」を選ばれているのでしょうか。

上妻さん:会社員同士のコミュニケーション手段というのは、飲み会やゴルフ、BBQや花火大会などいろいろあると思うのですが、そのなかでも私の経験上、登山がいちばん優れていると思うんです。なぜなら、必然的に長い時間一緒に過ごすから。

極端な話になってしまいますが、北アルプスに行けば、朝4時からヘッドライトを点けて歩き始めて、一緒に朝昼晩とご飯を食べて、小屋に泊まって、星空を眺めて、また朝一緒に起きることになりますよね。他の手段ではこんなに長いこと一緒に過ごすことはありえないですし、こんなに深く相手と関わることもないと思うんです。それが登山の何よりの魅力であり、他のコミュニケーション手段との違いだと思います。

▲北アルプスの山々へとつながるわさび平小屋前にて。長い時間を共にすることで絆が深まる

社内での理解も徐々に広がってきていまして、労働組合の支部イベントとしても登山イベントを開催しました。少しずつ活動の規模も大きくしていきたいなと考えています。

── これまでは、どんな企画を実施されましたか?

上妻さん:最近仕掛けたのは、あえて経験がない人だけを集めた登山イベント。みなさん日々忙しく仕事に励んでいますから、そんな人たちにこそ、自然がいかに心身をリフレッシュさせてくれるかを伝えたい。本当に効果があるんだってことを示したくて、行ってない人ばかりに声をかけています。その上で、ちょっとだけしんどい体験になるようにコースや歩くペースを調整するんです。運動した分、下山後のビールのうまさが変わりますからね(笑)。

実際に参加してくれた新入社員の女性に、「体が軽くなりました!体が健康だって感じます、次回も登りたいです!」と言われた時は嬉しかったですね。東京出身の社員だったのですが、高尾山にも登ったことがなかったらしくて、こういう機会を作れてよかったなと思いましたね。あとはしつこいようですが、下山後のビールの感想も楽しみにしています(笑)。

みんな、ほどよい疲労感があるからこそ、テンションも高め。ビールを見て「あの金色に光る物体は何なんでしょうか?!」と言わしめたときは、してやったり、と思いましたね。

▲下山後の美味しいお酒とご飯まで含めて、登山を企画されているそう。

社内登山の企画は登山「+α(アルファ)」で考える

── 会社の同僚たちとの登山を企画する際に気にかけていることはありますか?

上妻さん:参加するメンバーは年齢も体力レベルもバラバラですから、最も体力がない人にペースを合わせています。スケジュールを決める時は、標準コースタイムの1.2〜1.4倍で計算していますね。あとは、下山後の温泉とビールは欠かせませんので、お店の予約時間を逆算してスケジュールを組んでいきます。

行き先は、観光的要素を必ず含められるルートにしています。途中に有名な建築があったり、古墳があったり、飛び込める沢があったり、景色が良かったり、、、「登山」だけではないエンターテイメントを含めることが大切です。

今考えているのは、下山後にお寺に立ち寄って坐禅に挑戦してみるプラン。いろんな山の楽しみ方を知って欲しいので、新しいエンタメを求めて、よくGoogleマップとにらめっこしています(笑)。

▲世界遺産・厳島神社の背後にそびえるご神体の山「弥山(535m)」にて、神の使いと遭遇

── グループ登山をする上で、人数が増えると危険も多くなると思いますが、気にかけていることはありますか?

上妻さん:あんまり大人数になってしまっては、周囲の登山者さんへの迷惑になってしまうと思っていますし、当然リスクも高まります。なので人数に関しては、行き先、交通手段なども含めてケースバイケースで考えています。山行当日は、先頭は私なので、1番後ろは経験者にお願いするようにしています。

自然の力は人にも伝播する

── 上妻さんが思う、グループ登山の魅力はどのようなところですか?

上妻さん:山は、やっぱり癒されますよね。日々の仕事のストレスを忘れることができるし、自然の中に身を置くのは気持ちがいいことだと感じます。ただグループ登山では、自然に癒されるのと同じくらい「人」にも癒されているなあと思いますね。

山の中にいると、みんな自然とおおらかになっていって、心の中も開放的になって、いろんなことを話せるようになりませんか?真面目な話をしたくなるのも、童心に帰ってはしゃいでしまうのも、街ではあまり見られない姿だと思うんです。「人同士にも癒し合える関係が生まれていく」。これがグループ登山のよいところだと思います。

私は転勤族なので、登山を通して仲間が増えるというのもよいところですね。会社の山仲間とは、出張などで同じ場所にいれば必ず飲みに行きますし、自然と「山」という共通の話題で盛り上がる。そんな関係性の友人を増やしていけるのも、魅力のような気がしています。

── 社内登山部の活動が、仕事などに活かされていると感じる瞬間はありますか?

上妻さん:登山ではなくても良いとは思うのですが、会社の同僚との会話のネタがひとつ増える、ということにはかなり大きな意味があると私は思っています。今のご時世、会社の中で仕事以外の話をする機会は少なくなってきています。でも、同僚たちと「次はどこに行こうか」と考えたり話したりしながら仕事をすることは、仲間たちとの結束力を高めてくれるし、純粋に仕事への活力にもつながっていると思います。登山をするようになって、仕事の充実度も変化したなと感じています。

社内登山へ行こう!仲間と楽しむ自然時間のススメ


自然の中でリフレッシュできるだけじゃなく、仲間との結束力も深まる「登山」。同じ景色を見て、同じ達成感を味わうことで生まれる一体感は、心の距離を縮め、信頼や絆を育んでくれます。仲間との絆が深まることで、日々の仕事にも思わぬ変化が生まれるかもしれません。

「次の週末は、会社の仲間や友人と一緒に登山をしてみようかな?」

そう思った方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。