登山を始めるきっかけで多いのが、「職場の仲間に誘われて」というパターン。仕事とプライベートを分けたいという人もいる一方、なぜ同僚たちと行くグループ登山が増えているのでしょうか。そこで、登山コミュニティをもつ企業の登山部員たちに、心身のリフレッシュだけではない、グループ登山の魅力を伺う「登山部インタビュー」連載をスタートしました。
第九回にご登場いただくのは、中央アルプスのお膝元・長野県駒ヶ根市に本社をかまえ、再生可能エネルギーの開発・施工・保守・リサイクルなどを行うネクストエナジーアンドリソース株式会社さん。きっかけは山好き社員の一声だったグループ登山ですが、口コミで社内に広がり今では20人強のコミュニティになりました。今回は、現職登山部の中でいちばんの古株だという稲葉さんにお話を伺いました。
2025.02.18
YAMAP MAGAZINE 編集部
話を聞いた人
稲葉 啓太さん:オフグリッドシステム技術主任
【ネクストエナジーアンドリソース株式会社】
ネクストエナジーでは、再生可能エネルギー利用の普及と促進を使命とし、産業用・住宅用太陽光発電を中心に様々な事業を展開しています。太陽光発電関連機器の製品開発から販売、設備の施工、長期的な安定稼働を目指すO&M、そしてリユース・リサイクルまで、いわば太陽光発電のゆりかごから墓場まで一貫したサービスを行っております。
Webサイト:https://www.nextenergy.jp/
── ネクストエナジーアンドリソース株式会社(以下、ネクスト)さんの登山部活動はいつから始まったのでしょうか?
稲葉さん:2015年頃、社内に山好きを公言する社員がおり、興味があったメンバーで登山した際の4人くらいのチャットグループがそのまま社内の登山部的な位置づけになっていったのがきっかけです。
僕自身は登山経験者なのですが、入社した時にはすでにチャットグループがあったので、先輩社員に誘われて入りました。気付けば社内では自分がいちばんの古株になってしまい、リーダーのような動きをしていますけれど、自分としては「リーダーだ!」というような自覚はあまりないですね(笑)
── 現在のメンバーは20人強とのことですが、どのようにメンバーは増えていったのでしょうか?
稲葉さん:僕自身もそうですが、口コミというか、個人的に声を掛けるようなことが多いですね。一度だけ、社内報にのせてもらったこともありますが、興味のある人は自ら意思表示をしてくれることが多いですし、会話の中で興味をもってくれたら誘っている、というような感じです。でも、新卒入社の社員には必ず声をかけているかな。退職してしまったメンバーも登山部のグループには残ってくれているので、新卒とOBが一緒に登山したりもしますよ。
── 活動頻度はどのくらいですか?
稲葉さん:頻度は特に決めていなくて、チャットグループのなかで誰かが「やりたい」と言ったら開催されます。僕以外にも、企画を提案&リードできるような仲間が数人いるのでおまかせすることも多いです。僕たちの登山部は「年に1~2回くらい山に行きたい」という人が半分くらいなので、大々的な企画として実施するのは春と秋に1回ずつって感じですね。初心者メンバーからの、「ここに行ってみたい」という相談から企画が始まることもあります。
▲みんなで輪になって餃子パーティ
── 活動の際に意識していることなどはありますか?
稲葉さん:山選びはこだわっているかもしれません。山頂の景色がよくて、山行時間は片道2時間以内の山を選ぶようにしています。基本的に休憩は多くとるようにしていますが、山頂までの道のりに眺望ポイントや奇岩などがあるような、飽きにくいコースを選ぶことも意識しています。よく行く山は、長野県伊那市の「守屋山(1,650m)」です。
▲守屋山山頂。360度の開けた景色が楽しめる。
あとは、山頂でぎょうざを焼いてみたり(メンバーからの要望!)とか、ちょっとおもしろいことを用意していますね。おやきを焼いてみたり、しそジュースを作ってもっていったり、親子で参加してくれるメンバーがいるときには、クエン酸と重曹を持っていって山の上で実験してみたりもしました。
▲クエン酸と重曹を用いた実験のようす。学びの多い山行!
── 参加メンバーからの一言など、印象に残っていることはありますか?
稲葉さん:学生時代からマラソンやトレランをしていた新卒の子がいたのですが、声をかけて会社のグループ登山に誘ってみたんです。その子から下山中に言われた、「いつもは走っているので、山で立ち止まって草花を眺めたり写真を撮ったりすることがなかった。山でこんなに周りを見たのははじめて。グループでゆっくり歩くからこそ見える世界に初めて気づいた」という言葉は印象に残っていますね。これはグループ登山だからこその魅力だよなあと改めて実感させてもらいました。
── 登山部の活動が、仕事に活きていると感じる瞬間や事象はありますか?
稲葉さん:後輩から、「あんまり上司のプライベートに近い人柄を知る機会がないので、登山部に入って連絡先や人柄も知ることができて、コミュニケーションがしやすくなった」と言われたことがあります。僕自身もそう思いますね。他部署の同僚や上司とも話す機会になり、仕事での連携などでも心理的なハードルが下がりましたね。会社としては上下関係を重視しないフラットな社風なんですが、新卒社員などはやはり気にするものだと思うので、登山部の活動は会社の雰囲気を知ったり、コミュニケーションのハードルを下げることにも繋がっているのではないかと思います。
── 稲葉さんが、ネクストエナジーアンドリソース株式会社の登山部運営を続ける理由はなんですか?
稲葉さん:正直、自分は立ち上げメンバーではないのでリーダーとしての感覚や自覚はあんまりないんです。基本は他のメンバーに任せるスタンスなんですが、誰もなにもしないとこういうコミュニティは廃れてしまう。誰かがアクションを起こさないと始まらないし続かないから企画してみたりしています。
でも登山部の存在は、自分にとってメリットがあったし、これからもあると思っていて。メンバーの中には退職している人もいるから、会うためのきっかけづくりにもなっているんです。「人と人とのつながりを、これからも続けていきたい」という気持ちが僕自身にあるのだと思います。立ち上げた人たちの大半は退職してしまっているのですが、発足は2015年なので部としてはそろそろ10年を迎えるんです。OBやOGを集めてBBQとかもしてみたいなと思っていて、少しずつ企画中です。
── 最後に、登山部の活動を通して稲葉さんが感じている、グループ登山の魅力を教えてください。
稲葉さん:ひとりでは勇気が出ないとき、声を掛ける場所があるという魅力は大きいなと思います。未経験の人や初心者の人にとって、ひとりで新しい山に挑戦することはかなりハードルが高いことだと思うんです。いろんなレベルの人たちが集まっているグループだからこそ、行きたい場所ができた時に相談をしたり、立ち上がった企画に参加したりが気軽にできる機会をつくれる。世代や性別も問わず和気藹々と過ごすことができるのも魅力ですよね。山だからこそのちょっとしたハプニングもエピソードとして強く印象に残るので、下山後の会話も弾むような気がします。
自然の中でリフレッシュできるだけじゃなく、仲間との結束力も深まる「登山」。同じ景色を見て、同じ達成感を味わうことで生まれる一体感は、心の距離を縮め、信頼や絆を育んでくれます。仲間との絆が深まることで、日々の仕事にも思わぬ変化が生まれるかもしれません。
「次の週末は、会社の仲間や友人と一緒に登山をしてみようかな?」
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