親子登山をしてみたい。けれど、どんな山へ連れて行けばいい……? おすすめの山が知りたい! そんな疑問に答えてくれるのは、我が子が生後8ヶ月のときから親子登山をスタートし、現在も「山ヤ流子育て」を実践されているまつだしなこさん。「親子登山の山選び」をテーマに、山選びの大原則や年齢別に考慮すべきポイント、具体的なおすすめの山について超絶詳しく教えていただきました。
子どもと山へ! 0〜5歳の親子登山ガイド/ 連載一覧
2023.09.22
まつだ しなこ
子連れハイカー
親子登山歴5年になる私たち夫婦ですが、それでもいまだに頭を悩ませるのが山選びです。
なぜなら、何歳ならどの山に登っていいという明確な基準がどこにもないから。調べれば調べるほどに幼くして高山登頂や百名山制覇という情報ばかりが目に止まり、子どもとこんな高山に行けるのかと心惹かれたりします。難易度の高い山に挑戦することを喜びとしてきた山ヤ夫婦なだけに、最初は子連れで行く適切な山を選ぶ基準がわかりませんでした。
地図を広げて夫とああでもない、こうでもないと議論を重ねて至った結論が、親子登山では「短くて、小さくて、ワクワクすること」を基準に行き先を選ぶ、ということです。
一つ目のポイントは標準コースタイムが短いこと。コースタイムが長いと気持ちが焦って、子どもを「早く早く」と急かしてしまいます。コースタイムの2.5〜3倍かけてのんびり歩いても明るいうちに下山できるくらいの距離がちょうどいい。心の余裕を持てることが、楽しい親子登山の要でもあります。
二つ目のポイントは標高差が小さいこと。標高差というのは、山の高さではなく、登山開始地点と山頂の差がどれくらいあるかということです。距離が短くても標高差が大きいと急な坂が続くため、疲労度は倍増します。また、乳幼児期はロープウェイなどで一気に標高を上げると体調が急変するおそれもあるので、標高差があるコースでは子どもの体調にいつも以上に配慮が必要でした。
三つ目はワクワクするような “お楽しみ” が待っている山に行くことです。娘が登山を始めた当初は、山頂からいい景色を見たいという意欲はあまり感じられませんでした。そこで考えたのが、歩き続けるモチベーションを保つために「山頂にお花が咲いているよ」「シカに会えるかもしれない」というように、登山の目標を立てること。ワクワクするゴールがある山であれば、最後まで歩くことができます。
この3原則をベースとして、さらに年齢別に変わってくる山選びのポイントをご紹介したいと思います。
子どもの体力や歩行能力、そして興味があることは成長とともに変わってくるもの。最初は子どもにとってはおっかなびっくりの山登りでしたが、何度か登っているうちに「自分で歩きたい」「岩登りが好きだ!」と挑戦してみたいことが出てきました。
そこで、子どもの挑戦したい気持ちに合うように、少しずつコースタイムや道の難易度を上げ、登る山をレベルアップしていくことに。その結果、わが家の子どもたちは今やすっかり逞ましい“登山家” に成長することができました。
山を選ぶポイントは、おむつ替えができるトイレが登山口付近にあるかどうか、でした。登山を開始すると、山中でのおむつ替えは至難の業。できれば登山口で交換してから登山を開始したいものです。
また、夏は暑く熱中症が心配ですし、冬は寒く風邪を引かないかハラハラします。春秋は気候が良いので長く山にいたいところですが、長時間ベビーキャリア上で同じ姿勢でいるのは子どもがかわいそうです。そこで、コースタイムは3時間以内を目安にしていました。
ここでご紹介する山は、どこも登山口または最寄駅におむつ替えができるトイレがあります。
歩行が安定せず、まだまだ体力もない1歳から2歳は、コースタイムがとにかく短いところを選びます。片道30分で十分。それでも下山はベビーキャリアに乗って下山することがほとんどです。
歩くことに時間がかかる時期なので、標準コースタイムの3倍かかることを想定して登山計画を立てました。
親としてはほぼ散歩。当然、物足りません。すぐ立ち止まってしまうのでいっそ抱っこして歩いてしまった方が楽なのではと思うときすらあります。しかし、この時期に「最後まで自分で歩けた!」という体験をすることで、後々「抱っこ!」と座り込む回数が減ったのではないかと思っています。
こちらでご紹介するコースは、片道たった30分。往復で1時間程度ですが、どの山も頂上からの景色がよく、短い時間でもしっかり登山を楽しめます。
イヤイヤ期真っ最中、「自分で!」「一人で!」と主張が止まりません。自分で自由に歩きたくて仕方がない時期です。
そこで3歳くらいは、もはや登山道というより普通の道路に近いくらい道が広くて、子どもが一人で歩いても危険が少ないところを選びました。
親の手を振り払って一人で歩き出して思わぬところで転ぶことも増えますが、それも大事な経験の一つ。「危ない、ダメダメ」ばかり言っていては親も子どももストレスです。自由に歩きたい気持ちを尊重して、滑落したりすれ違いで人の迷惑にならないような広い道を選びましょう。
こちらでご紹介するコースは整えられた遊歩道のような道を歩きながら、自然をたっぷり楽しめます。
体力もつき山道に慣れてくると、アスレチック感がある岩場コースを好むように。自信もついてきたので、安全で歩きやすい道をゆったりした気持ちで歩くことより、冒険や挑戦を求めるようになったのでしょう。
大きな岩を、カモシカのように軽やかに登っていくのが楽しそう。
このとき、子どもが転倒しないようにしっかり支えることも大事ですが、子どもが石を蹴落として下の人に当たらないように十分注意してください。
また、岩場は下山のときこそケガが起きやすいもの。できれば登りは岩場、下りは別の巻道で平坦な道を通ることができるコースが安全です。下山はケーブルカーやロープウェイを利用するのもよいでしょう。
これくらい変化に富んだコースを登れるようになると、登る山の選択肢がグッと増えてきます。いよいよ親子登山が楽しくて楽しくてたまらなくなってきました。
こちらでご紹介するコースは大人の登山としては短めですが、森歩きあり、ゴロゴロ石の登り坂あり、山頂からの絶景ありと、歩いていて飽きないオススメコースです。
どんなに「短くて、小さくて、ワクワクする」山を選んでも、絶対に安全な山というのはないと思っています。ですので、無理のないコースを選ぶことと合わせて、2つのルールを守っています。
一つは、どんなに難易度が低いと言われる山でも、かならず地図は持っていくこと。無料で地図をダウンロードできるサービスもありますし、YAMAPなどの山岳系のアプリであればGPSで現在位置を教えてくれる機能もあり便利です。
子連れではないときですが、地図を持たずに裏高尾を歩いていて迷子になったことがありました。一度、道を見失うとあっという間にパニックとなります。地図は頻繁に確認するようにしています。
もう一つが、引き返すポイントと時間を決めておくこと。そしてそのタイミングが来たら、頂上まであと少しであっても引き返すことです。子連れだと、なにごとも予定通りに進まず、入山時間が予定より遅くなることがあります。したがって、下山時間も遅くなりがち。夕方に近づくほどに事故や遭難のリスクが高くなります。
わが家では15時に下山をデッドラインとして、何時までにどのポイントに行けなかったら引き返すか、あらかじめ決めておくようにしています。
親子登山の醍醐味は、山登りを通して子どもの成長を感じられることにあると思います。無理なく楽しめる山に登ることが大前提ですが、登る山を少しずつレベルアップしていくことも大切。1回や2回ではなく継続的に山へ登り続けていると、想像以上に子どもは逞しく変わっていきます。
親子登山を楽しみながら継続するコツは、行ってみたい山や、山でやってみたいことのような、ワクワクする目標を家族で共有することではないでしょうか。
わが家の場合、親子登山を始めたとき「子どもたちに山で朝日が昇る瞬間を見せたい」という目標を立てました。そして5年間の親子登山を経て、ついに先日、娘は中央アルプス・木曽駒ヶ岳にて初めてのテント泊を経験。朝日が暗闇を照らし出す神々しい瞬間を自分の目で確かめてきたのです。
3歳の息子と麓で待機するため山の中腹で引き返す私に、娘は「お母さんのために朝日の写真をたくさん撮ってくるからね!」と自信に溢れた笑顔で約束してくれました。
まだ歩けない娘を背負って始めた親子登山。つい最近まで、30分の道のりですら「もう歩けない、抱っこして」と座り込んでいた娘を励ましながら登っていた気がしていたのに、いつの間にか私の方が見送る側になっていました。驚くべき成長ぶりです。
次に娘が目指す目標は「南極の山に、家族で登ること」とのこと。一つの目標を達成した後の子どもは、無限の希望と自信に満ち溢れています!
地球儀をくるくる回しながら南極に想いをはせる娘に、私も負けていられません。壮大な夢の実現に向け、親子登山は私の生涯の挑戦になりそうです。
家族で楽しむ外遊びや登山の万が一を支えてくれるのが、YAMAPグループの「外あそびレジャー保険」。個人やグループでの加入プランだけでなく、家族最大8人まで一律の保険料で補償の対象となる家族プランもご用意しています。
登山はもちろん、海や川での怪我や捜索費用も補償するほか、自転車の転倒によるケガや遊んでいる子どもの転倒など、日常の不慮の事故も補償。期間は7日間から選べて、申込みはスマホから5分で完了。
家族と一緒のときも、一緒にいないときも、より安心して過ごすために。「外あそびレジャー保険」は、アクティブに毎日を過ごしたい家族のための、いざというときのお守りです。