2019.09.27
YAMAP MAGAZINE 編集部
福岡から九州自動車道・大分自動道を経て車で約1時間半。筑後平野のさらに奥、豊かな山々に囲まれた盆地に大分県日田市はあります。
九州を代表する河川、筑後川の源流に位置するこの街は、北部九州の各地を結ぶ交通の要所として多くの人、文化が行き交った歴史ある土地です。古くは第12代の景行天皇(けいこうてんのう)が熊襲(くまそ)との戦いのため、九州に遠征した際に立ち寄ったという伝説も残っています。
今回YAMAPでは、ここ日田の地で人々が神を祀り、自然を敬ってきた「祈り」を辿る試みを始めます。舞台となるのは古くから日田地方の中心地として栄え、九州の小京都とも称されてきた市街地。そして地元の人々に神の住む場所として崇められてきた津江の山々とその麓の田代集落です。
ナビゲーターは、尾道自由大学校長で同大学神社学教授の中村真さん。世界中を歩き、祈りを見つめてきた中村さんが日田の街、そして津江の山々を巡り見出した祈りの姿。そこには、太古の昔から人が行き交い、文化が混ざりあったからこそ生まれた信仰の形と、今なお生活の中に息づく自然への崇拝がありました。
中村真。尾道自由大学校長・神社学教授/イマジン株式会社代表取締役。
神社や暮らしの中にある信仰を独自に研究する神社愛好家。
日田の街には、本当に多くの神様が祀られています。大陸からの渡来人が伝えた神様や山岳修験者が伝えた神様、そして太古の昔から日田に住む人々に恵みを与えてきた自然の神様。
「祈りの山」本編では、祈りの地を中村さんが巡り、神々の系譜やその場所に祀られている意味、祈りに込められた人々の願いについて想いを馳せます。
日田駅そばには日本神話にも出てくる神様、猿田彦が祀られていました。その周りには、街の人々が置いた大黒様や恵比寿様、招き猫に聖マリア像まで。駅前の何気ない風景の中からも、信仰の多様性を伺い知ることができます。 <address>日田市隈2丁目1−9そば
中心地から車で7分ほど。荒々しい岩山に張り付くように佇む小ヶ瀬神社の隅に祀られるのは真言密教の開祖、空海と不動明王。中村さん曰く、この場所に修験の信仰があった痕跡ではないかとのこと。<address>大分県日田市日高 小ヶ瀬(1)信号そば
津江三山のひとつ、御前岳の麓の田代集落にある御前嶽神社。人々はこの神社を通して神の住まう山、御前岳に祈りを捧げてきました。<address>大分県日田市前津江町柚木3002そば
旅の間、多くの人と出会い色々な話を聞くことができました。畏れと親しみ、その両方の気持ちを持って、日田の人々は神様と付き合ってきたのです。
旅の舞台は、神が住む場所として人々が崇めてきた津江の山々へ移ります。日本有数の規模を誇る神秘的なシオジの原生林や、遠く阿蘇山まで望める絶景の尾根を歩きながら、中村さんは、山岳信仰の痕跡を探します。
美しいシオジ原生林、そして木々の間を流れる澄んだ小川。御前岳に広がる光景は原始の森の姿をそのままに残しています。
神前で笛を奏でる中村さん。音楽はその昔、神様に捧げる神聖な遊びでした。神々が多様なように、祈りの形もまた多様です。
旅先で目にする、名も知らぬ神社や路傍の石碑。郷土に生きる人々が静かに伝え守ってきた自然への畏れ。祈りを辿り、街と山を歩くと、そこにはいつもと違う日田の風景が広がっていました。
古くて新しい日田を知る旅、「祈りの山 大分日田編」どうぞご期待ください。