雪山の基本、ノーアイゼンの歩行技術をマスターしよう!|雪山登山の基本 #06

登山ガイドの石川高明さん曰く、「雪山こそ、基本の歩行技術が大事!」とのこと。初心者向けの雪山ツアーでも、まず始めにレクチャーするのが基本の歩行技術で、「転ばない」ように歩くことを目指してもらうのだそうです。今回は“アイゼンを装着しない状態”での基本的な歩行技術「フラットフッティング」を教えていただいたあと、歩行技術が雪山の難易度にどう関わっているのかも解説していただきました。

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2021.02.19

石川 高明

信州登山案内人・登山ガイド

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雪山の歩行技術というと難しそうなイメージを持っている方も多いかもしれませんが、基本の歩行技術は夏山とほとんど変わりません。でも、きちんと歩けている方はとても少ない。雪山になったとたん、滑ることへの恐怖心や、足元の不安定さから、姿勢が崩れてしまい、間違った歩き方になってしまうんです。

雪山では「転ばない」ことが何より重要。まずは、登山靴だけで(アイゼンなしの状態)で歩いても転ばない基本の歩行技術を身につけて、安全に雪山を歩きましょう。

雪山では「転ばない」ことが大事!|転ぶことがリスクになる

私が雪山ツアーで一番最初にお教えするのは「転ばないように歩く方法」です。アイゼンやピッケルの使い方を学ぶことももちろん重要ですが、何よりも「転ばないように歩く」ことが安全への近道だからです。

夏も冬も変わりませんが、転べばケガをしたり、滑落したりする可能性があります。特に雪山では一度転んでしまうと、雪や氷で滑って制動が難しくなります。初期制動や滑落停止など、危険を回避する技術はありますが、効果的に発動させるのは雪山上級者であっても至難の業です。

また、雪山は足元が滑りやすいため、へっぴり腰になったり、かかとから着地したり、間違った歩き方になりやすい。普段はしっかり歩けている人も、慣れない雪道では注意が必要なんです。

雪山は斜面が雪で覆われてしまうため、夏山よりも斜度がきつくなることも。転ぶと滑落する可能性も増大する(写真提供・石川高明)

基本の歩行技術|フラットフッティングを身につけよう!

まず始めに身につけたいのが「フラットフッティング」という歩行技術。足裏を地面にしっかり押しつけて歩く方法です。雪道では、かかとや爪先など、足裏の1点で着地するのは御法度。1点に力が集中しているので、「ツルン!」と見事に滑ってしまいます。一方、フラットフッティングは足裏全面で摩擦を生み出すので、滑りにくく、歩行が安定します。

登りでは、斜面を少し蹴って足場を作ったあと、フラットフッティングでしっかりと踏みしめるようにします。下りでは、できるだけ足裏全面を使って、斜面を踏みしめます。ここで注意したいのが、かかとを使って蹴り込んでしまわないこと。かかと1点に力が集中するので、柔らかい雪のときは崩れやすく、硬い雪のときは滑りやすくなります。

また、雪山では、歩幅は小さめに、一歩ずつ丁寧に歩きます。一方の足を安定させてから、次の足を出すことを意識しましょう。

なお、アイゼンを履かない状態で斜面を登るにはキックステップという方法もあります。

それでは、ノーアイゼンの雪上歩行について動画で見てみましょう。

雪山登山の難易度は歩行技術と道具で決まる

ところで、初級・中級・上級といった雪山登山の難易度は、歩行技術などによって決まると「雪山登山の基本#01」で解説しましたが、先に紹介した基本の歩行技術「フラットフッティング」は、初級の山でしか使えない技術なのでしょうか。答えは「NO!」。フラットフッティングは初級でも上級でも使う歩行技術です。

しかし、中級以上では、アイゼンを装着したフラットフッティングになります。つまり、雪山登山の難易度は歩行技術だけでなく、使う道具にも左右されるということ。目安としては、初級はストックと軽アイゼン(スノーシュー、わかん)で歩ける山、中級以上はストックまたはピッケルとアイゼンを使う山、という区分になります。

12本爪アイゼンとピッケルの組み合わせ。登る山の状況や難易度に合わせて必要な技術と使う道具が変わる

また、中級以降では、フラットフッティングにプラスして、フロントポイントという歩行技術を使うようになります。フロントポイントはアイゼンの前爪を使った歩き方で、アイゼンワークのひとつです。また、中級以降ではピッケルワークも重要で、ピッケルをバランス保持の杖として使うだけでなく、ピックを雪面に刺して手がかりにしたり、ブレードで雪を削って足場を作ったりと、難易度の高い山ほど、高度なピッケルワークが求められるようになります。

第7回と第8回では、アイゼンとピッケルの基本情報を解説する予定です。どちらも、初めて触る人向けの「基本的な使い方」も紹介しようと思っています。まずは初級の山で基本的な使い方を試してみて、装備の特徴や役割を体験することから始めましょう。

写真/宇佐美博之(提供写真以外)

石川 高明

信州登山案内人・登山ガイド

石川 高明

信州登山案内人・登山ガイド

長野県在住。1967年東京生まれ。学生時代から登山に親しむ。最初に登った山が八ヶ岳。大手電機メーカーを2000年に退職し、世界一周登山の旅に出発。途上のスイス ツェルマットで2年間トレッキングガイドを勤める。帰国後、八ヶ岳の麓で子育てをすべく、2008年長野県原村に移住。各国の山岳地域を旅した体験や、スイスで観光業に携わった経験を活かし、 地元地域や観光活性化のお手伝いをしながら、各種イベントを実 ...(続きを読む

長野県在住。1967年東京生まれ。学生時代から登山に親しむ。最初に登った山が八ヶ岳。大手電機メーカーを2000年に退職し、世界一周登山の旅に出発。途上のスイス ツェルマットで2年間トレッキングガイドを勤める。帰国後、八ヶ岳の麓で子育てをすべく、2008年長野県原村に移住。各国の山岳地域を旅した体験や、スイスで観光業に携わった経験を活かし、 地元地域や観光活性化のお手伝いをしながら、各種イベントを実施してい る。
原村観光連盟 副会長/八ヶ岳観光圏 観光地域作りマネージャー
公認スポーツ指導者 山岳指導員/長野県信州登山案内人
(株)八ヶ岳登山企画 代表取締役/登山歴30年/スノーシュー歴20年