登山用グローブ(手袋)の選び方|季節や標高、登山スタイル、素材の違い、防寒レイヤリングを解説【登山初心者の基礎知識】

岩場でのけが予防や、風雨、雪のときの防寒で活躍する登山用のグローブ(手袋)。山の状況に合わせ、適切なものを持っておきたい装備です。ただ、季節や登山スタイルごとに種類があり、素材もさまざま。

そこで、人気登山ガイドの上田洋平さんに監修いただき、今後の登山をステップアップする上で欠かせない、季節や天候、登山の目的ごとの選び方の基礎知識を紹介します。

2024.03.06

YAMAP MAGAZINE 編集部

INDEX

グローブ(手袋)の役割|登山のステップアップで欠かせない装備

手先が冷えない季節や、手を使って岩場や枝を登る場所がない低山では、「グローブを着けない」という人がほとんどで、特に問題はありません。

しかし、最初は低山からはじめても、山の魅力にとりつかれれば、登る山の標高やレベルは次第に上がっていくもの。そしてさらに、岩場の多い急登や、夏場でも朝晩や稜線で冷え込む標高2,000m〜3,000m強の山などを目指すようになっていくのです。

そこで避けて通れないのが、気温や山の状況に合わせたグローブ選び。登山におけるグローブには、主に以下のような役割があります。

①手の保護|けがや汚れ防止で活躍

手も使う急登の場合、木のとげによる刺し傷、岩での爪のはがれなどの恐れがあります。平地であっても、転倒して鋭利な岩に手をついたときに裂傷を負うこともあるので、グローブが必要なのは登りだけとも限りません。

登山道がないような山を登る山菜採りや渓流釣りでは、無意識に木をつかんだ際にウルシなどの樹液でかぶれることもあり、そういったリスクから手を守るのもグローブの役割。

泥の多い山では、昼食時に手をきれいにする水場やウェットティッシュがないと、手先が汚れていたり、爪に泥が入ったりしたままの状態でパンやおにぎりなどの昼食を食べなければならず、見晴らしのよい山頂でストレスを感じてしまうことも。こういった汚れから守るという部分でも、活躍します。

登山に行く前に、登山GPS地図アプリYAMAPの活動日記などで登山道を下調べした上で、手を使う岩場や急斜面があるとわかれば用意しておきましょう。

②保温|手先の濡れは全身の冷えに

雨や雪で手が冷えてしまうと、手の末端から冷えた血流が深部体温を冷やし、着込んでいても寒さを感じることがあります。

夏場でも、本州のアルプスや北海道の山で長時間雨のなか歩くと手から体温が奪われ、低体温症のきっかけになりかねません。レインウェア上下と一緒に、雨用の手袋もそろえたいところです。

手が冷えると指がかじかんでしまい、手先の感覚が求められる岩場や鎖場などで、通常の動作に支障が出ることも。

さらに本州厳冬期の高山や寒冷地域の低山などでは、凍傷のリスクが高まるので、中綿(インサレーション)やウールを使った素材のグローブなど、ウェア同様に組み合わせてレイヤリングします。

③滑り防止|素手推奨の場合もあり、状況によって判断

岩稜地帯や鎖場の山では、手の保護と合わせ、滑り防止として、操作性とフィット感のいいトレッキンググローブで登る人が多くみられます。実際に、国内大手ブランドのモンベルでも、岩稜帯や鎖場での使用を想定したグローブを展開しています。

ただ、慎重なムーブが求められるテクニカルな岩場や鎖場では、手先の感覚がつかみやすい素手での登はんを推奨するガイドも。素手では、夏場に汗で鎖や岩が滑るリスクもあるなど、登山者それぞれがそのときの状況によって判断しているのが実情です。

少なくとも、軍手のような滑りやすい素材の場合には、素手が推奨されます。軍手の使用の注意点については、後述します。

⑤日焼け防止

トレールアームカバーライト(Men’sWomen’sともに展開あり)(画像提供:モンベル)

夏のアルプスや富士山では、日焼け対策を怠っていると、日焼け止めを塗っていない露出部分がすぐに日焼けしてしまいます。手首まですっぽりと覆うロングタイプのアームカバーなどをつけている女性の姿が夏には目立ちます。

気象庁によると、夏の快晴時の紫外線観測で、 乗鞍岳(2,772m)は、観測場所のある茨城県つくば市(31m)に比べて、紫外線が約40%強くなりました。1,000mあたり15%ほど強くなる換算で、高山で日焼けしやすいことが数値でもはっきりとわかります。

参考:気象庁『標高と紫外線』

登山用グローブの季節、用途ごとの使い分け

同じ季節でも、登山ではさまざまな場面があります。状況に応じたタイプの選び方を紹介します。大まかに分けて、以下のような種類があります。

春、秋の低山、夏の高山での保温、保護

トレッキンググローブ

ツキノワグマOUTDOOR RESEARCH(アウトドアリサーチ)メロディーセンサーグローブ/WOMENS(YAMAP STORE

雪山以外の3シーズンの低山や、夏のアルプスなどの高山で使用するグローブ。1枚もののシンプルな作りで、手のひらは合成皮革のものが多く、グリップ力があります。吸水速乾性・消臭・UVカット・スマホ操作ができるなど、グローブによって様々な機能を備えています。

春・秋の低山の1枚使用や、厳冬地でのインナーでの保温

インナーグローブ

handson grip (ハンズオングリップ)バウンス/UNISEX (YAMAP STORE

冬山で使う場面が多い、オーバーグローブの下に着けるグローブ。冬山での素手の作業は凍傷の危険があり、オーバーグローブをやむを得ず外す細かい動作の場合にも、インナーグローブが重要な役割を果たします。厳冬期以外のシーズンはオーバーグローブなしで1枚で使うこともできます。

メリノウールやナイロン、ポリエステルなど、さまざまな素材のものがありますが、手汗で手袋の内側が濡れることもあるので、綿(コットン)は避けたいところ。インナーとシェルがセットになっているタイプもあります。

NORRONA(ノローナ)フィオーロ メッシュグローブ/UNISEX(YAMAP STORE

ポリエステルやナイロンなど、化繊素材で作られたグローブは、軽量で乾きやすいのが特徴。柔らかく快適な装着感で、手指を動かしやすいのもポイント。

and wander(アンドワンダー)ハイロフトフリースグローブ/UNISEX(YAMAP STORE

フリースは、保温性が高く、手を冷えから守ってくれます。風を通すため、稜線上の風が吹き抜ける場所などには不向きです。樹林帯に囲まれた低山など、春先や秋の山歩きにおすすめ。

厳冬期の雪山や高山、寒冷地域の低山

オーバーグローブ

厳冬期にインナーグローブの上に着ける、防水、防風性を高め、保温性を上げるグローブ。トラディショナルな革製品のほか、ゴアテックスなどの防水透湿素材を使用したモデルが現在のスタンダード。手のひらに特殊ラバーを圧着し、凍りつくことを防いでくれる仕様のモデルもあります。

ミトンタイプのオーバーグローブは中で指がまとまるので保温性が高く、アルプスや北海道・東北などの寒冷地の山にはおすすめ。

しかし、細かい作業ができないという欠点があります。それを補うため、ブラックダイヤモンドの「ガイド フィンガー」のような、人差し指と親指が独立し、中指、薬指、小指がまとまった3本指タイプのモデルもあります。

香川県東かがわ市で、約60年に渡り手袋の生産を続けるhandson grip (ハンズオングリップ)ウィンター トラバースグローブ/UNISEX(YAMAP STORE

レザー素材のよさは、なんといっても強度や耐久性に加えて、手とのなじみの良さ。手の平部分だけにレザーを使ったグローブなどもあります。価格は高く、手入れに手間がかかるといったデメリットも。

万能なゴアテックスのグローブ

「ゴアテックス」を使用した登山用グローブは、防水、防風、透湿性を備え、厳冬期以外にも、風雨が吹きつける春〜秋のアルプス稜線などで重宝します。

防水透湿性を備えた雪山登山対応の本格グローブ。OUTDOOR RESEARCH(アウトドアリサーチ)アレートIIゴアテックスグローブ/WOMENS(YAMAP STORE

下のOUTDOOR RESEARCH(アウトドアリサーチ)「ストームトラッカーセンサーグローブ」のように、鼻水が親指の付け根辺りで拭けるように布地になっているタイプが、わざわざティッシュを出す必要がなく、地味に便利です。

冬の低山(寒冷地を除く)におすすめのモデル。OUTDOOR RESEARCH(アウトドアリサーチ)ストームトラッカーセンサーグローブ/MENS(YAMAP STORE

インサレーショングローブ

ブラックダイヤモンドの定番の銘柄「ソロイスト」は、快適温度-9℃、限界温度-29℃。同社製品には、他のグローブにも快適温度と限界温度が明記されていて、選びやすくなっています。

厳冬期オーバーグローブ下のインナー

ウール素材のグローブ

保温力と吸湿性が高く、濡れても保温力が落ちにくいのが特徴。汗を吸って外へ逃す性質を持っています。低温の環境下では、オーバーグローブの下に着ける場合も。グリップ力がないので、岩場などの手を使う登山には向きません。

夏の高山、春秋での低山

フィンガーレスグローブ

handson grip (ハンズオングリップ)カーヴ/UNISEX(YAMAP STORE

指先が開いて涼しいのが特徴。スマホやカメラの操作など細かい作業に適し、夏山に重宝されています。ロープワークなどでも指先が動かしやすいです。

STATIC(スタティック)ヤクリストウォーマー/UNISEX(YAMAP STORE

春〜秋の雨

レイングローブ

finetrack(ファイントラック)エバーブレストレイルグローブ/ブラック/UNISEX(YAMAP STORE

季節が夏でも、アルプスなどの高山では気温が低く、手先から体温が奪われる場合もあるため、雨天の登山ではレインジャケットと同様に必須です。防水透湿性のものを選ぶと、蒸れにくくて、便利です。

雪山を席巻したコスパ手袋「防寒テムレス」

TEMRES(テムレス) 02winter(画像提供:ショーワグローブ株式会社)

低温作業用の手袋で、作業服専門店などで2,000円前後で購入できる「ショーワグローブ 防寒テムレス」。そのコストパフォーマンスの良さもあり、雪山登山やスキー・スノーボードのバックカントリーで使う人が増え、同社からアウトドア専用モデルが展開されるほどの人気に。

ただ安いだけでなく、低温でも固くならない素材で、透湿防水性のある素材、暖かい裏起毛など機能性も高く、冬のアウトドアで使う人が増えています。厳冬期にインナーと合わせて使う場合には大きめのサイズを選びましょう。

ただ、高い滑り止め効果によって、ロープを使うクライミングでは円滑なロープ操作ができず、ビレイデバイスに手が巻き込まれやすくなる欠点があります。

これらの理由で、冬にアイスクライミングができる八ヶ岳にある赤岳鉱泉の山小屋でも使用が禁止されています。

メーカーも「ビレイデバイスや回転体を伴う作業(ボール盤・面取り盤等)には使用しないでください。手が巻き込まれるおそれがあります」と注意を促しており、基本的にはロープを使わない登はんに限った使用が好ましいとされています。

登山用グローブのサイズの選び方

自分に合ったサイズのグローブを選ぶことも重要です。サイズが合わないとグローブの機能が十分に発揮されず、不快感を感じたり、血流が悪くなって指先が冷えることもあります。

素材の伸縮性や調整機能などでも感触が変わってくるので、必ず試着して、フィットしているかどうか確かめましょう。

サイズが合っていないと、うまく操作できず事故に繋がることもあるので、注意が必要です。

スマホのタッチパネル対応

写真を撮ったり、YAMAPアプリを使用したりと、登山時も欠かせないスマートフォン。グローブをしたままでは操作できず、何度も着けたり外したり…というのは少し前までの話。最近は、多くのトレッキンググローブがタッチパネル対応になっています。

指先に静電気量の伝導率が高い糸を使用することで、グローブを着けたままでもスマホのタッチパネルをストレスなく操作できます。紫外線が強い日でも、素手になることなく操作できるのは嬉しいポイント。

ちなみに、アウターとインナーを組み合わせる厳冬期では、そのままでは手先でタッチパネルが使えません。アウターをはずし、タッチパネル対応のインナーで操作するか、アウターをはずして手を冷やすリスクを最小限にしたい場合には、タッチペンという選択肢もあります。

最近SNSで、魚肉ソーセージがタッチペンがわりになることが話題になりましたが、タッチペン同様に、指2本でつまむ動作(ピンチイン・アウト)には不向きです。

そのため地図アプリを使うときには、タッチパネル対応のインナーがおすすめ。厳冬期の山では、なるべく素手を露出しないようにし、凍傷になるリスクを減らしましょう。

登山に軍手は不十分

登山には不向きな軍手(PIXTA)

日常生活の作業で軍手は便利なアイテムですが、登山には不向き。もちろん、手の泥汚れをふせいで山頂でおいしく昼ごはんを食べたり、擦り傷や木のトゲが刺さることを防止したりするためにも、素手よりも理想的な場合もあります。

ただ、一度濡れてしまうと乾きにくく、そのまま着用していると手を冷やす原因になります。

鎖などをつかんでもうまくつかみきれず、イボ付きの滑り止めがついているタイプだとしても、スルスルと滑るリスクがあります。

防風性もなく、保温という点でも頼りないので、やはり季節と登山スタイルに合ったグローブを使用するのがおすすめです。

登山にはグローブを携行しよう

手は常に外気にさらされているため冷えやすく、コンディションが悪化するきっかけになります。全ての場面で身につける必要はありませんが、ザックの中には常備しておくことをおすすめします。その日の気温や天気など、さまざまな状況に応じてチョイスしましょう。

監修:上田洋平さん

1979年2月10日生まれ。愛知県名古屋市出身、神奈川県藤沢市在住。2児の息子の父。

日本の山々だけでなく、海外の山々(アフリカ最高峰キリマンジャロ、南米最高峰アコンカグア)への登山経験を経て、2017年から富士山の登山ガイド。

2019年4月に日本山岳ガイド協会登山ガイドステージI資格、2022年4月に登山ガイドステージII資格を取得し、専業ガイドに。

山岳写真を撮るため、フルサイズ一眼レフ、ジッツォの三脚、雲台、標準ズームレンズ、望遠ズームレンズを担いだドM登山も敢行。

キャンプ、空手、筋トレ、旅行、読書、トレイルランニング、ギター、ゲームなど趣味多数。

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執筆・素材協力=上川菜摘、野々下桂子

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。