登山で育む、働く仲間の健康と心の充実|株式会社YAZ【登山部インタビュー】

登山を始めるきっかけで多いのが、「職場の仲間に誘われて」というパターン。仕事とプライベートを分けたいという人もいる一方、なぜ同僚たちと行くグループ登山が増えているのでしょうか。そこで、登山コミュニティをもつ企業の登山部員たちに、心身のリフレッシュだけではない、グループ登山の魅力を伺う「登山部インタビュー」連載をスタートしました。

第十一回は、Webサービス・システム開発をメイン事業とする株式会社YAZ(東京)さんです。同社は、健康経営優良法人の認定を取得し、IT業界で働く社員たちの心身の健康を第一に考えた活動を多数行っています。そのなかのひとつである「公認部活動制度」のなかで誕生したのが「トレッキング部」。今回は、部発足までの経緯や活動の様子だけでなく、会社全体として取り組む健康経営についてもお話を伺いました。

2025.02.28

YAMAP MAGAZINE 編集部

INDEX

話を聞いた人

左から
佐々木 努さん:執行役員 CTO
齋藤 菜都美さん:人事・採用広報担当
富田 真実さん:経理担当

 

【株式会社YAZ(ヤジュ)】
ITソリューション事業を中心に、SES・受託開発を展開。HRソリューション事業としてSaaS型タレントマネジメントサービス「TrueColors」も提供。社員の交流と健康促進のためトレッキング部を運営し、部門を超えた繋がりを育む。健康経営優良法人2024認証取得。
Webサイト:https://www.yaz.co.jp/

会社公認のトレッキング部、発足までの歩み

── 登山部発足のきっかけを教えてください。

佐々木さん:私たちの会社はシステム開発やITソリューション事業が主な業務で、社員にはITエンジニアが多いのが特徴です。この業界特有の課題として、運動不足になりやすい点が挙げられます。そこで「生涯働けるエンジニアの育成」をテーマに、運動促進を目的とした「運動促進委員会」を発足しました。

当初は運動が苦手な社員も多かったので、まずはさまざまな種目に触れることで自分の好きな運動を見つけようと、バッティングセンター、ボルダリング、ボウリング、ゴルフ、カート、ビリヤードなど、多種多様なスポーツ体験イベントを企画しました。その中にトレッキングも含まれていて、これが現在のトレッキング部の原点となりました。

2015年ごろには、種目ごとにリーダーが生まれ、「公認部活動」として制度化されました。現在のYAZトレッキング部は、会社公認の部活動として運営されています。

▲活動初期のYAZトレッキング部。初登山は奥高尾縦走路となかなかハードなコースを選んでしまったのだそう。

── 公認部活動は、会社からのサポートが受けられるのですか?

佐々木さん:はい、【5名以上の参加】と【年2回以上の開催】という条件を満たせば認められ、活動費として一人あたり3,000円まで補助を受けられる仕組みです。

── ほかの公認部活動は何がありますか?

佐々木さん:コロナ禍以前は、野球部やフットサル部が特に活発でした。ただ、コロナ禍の影響で活動が停滞してしまい、現在活動を再開しているのはトレッキング部と雪部(スキー・スノーボード)くらいですね。

齋藤さん:なぜか、アウトドア系の部活動だけは今も継続しています。

佐々木さん:野球やフットサルは、中心メンバーの年齢が上がったり転勤があったりして、人数をそろえるのが難しくなっているのだと思います。その点、登山は行き先やスケジュールを工夫すれば年齢や人数を問わず続けやすいのが利点ですね。

齋藤さん:私自身も初心者で、YAZトレッキング部の活動で初めて登山をしました!捉え方次第では「歩くだけ」という点も、他のスポーツに比べて参加のハードルが低いなと思います。

── トレッキング部の発足当初、登山経験のある人はいましたか?

佐々木さん:経験者はほとんどおらず、初心者が大半でした。富田さんは当初からのメンバーで、経験者の一人ですね。初期リーダーがライフステージの変化で参加しづらくなったため、今は富田さんがリーダーのように引っ張ってくれています。

富田さん:もともと石川県出身で、自然が身近な環境で育ってきたこともあり、上京してきてからの趣味が欲しくて、登山をしていました。私自身は経理職なので、エンジニアなど他の職種の同僚と話す機会があまりなかったこともあり、トレッキング部の活動を通して、自然と人に同時に触れ合う機会ができて、とてもありがたいです。

── 10年近くの活動で変化はありましたか?

佐々木さん:みんな回数を重ねるごとに、装備がレベルアップしていくのが面白いですよね。山の上で豆を挽いてコーヒーを淹れるメンバーもいます(笑)。

▲コーヒーミルやポットを背負って持ってきてくれるコーヒー好きのメンバー上野さん。

齋藤さん:グループチャットでは、山道具の購入報告やセール情報のシェアが活発です!

富田さん:人が使っているのをみると、やっぱり欲しくなってしまいますよね。私も周囲の影響で、ガスバーナーとトレッキングポールを買いました(笑)。

新人研修プログラムに「登山」を取り入れる理由

── 新卒社員の入社研修に「登山」が盛り込まれていると伺いました。

佐々木さん:そうなんです。当社では、新卒採用を始めた2015年から一貫して、研修プログラムに登山を取り入れています。以前は箱根、現在は三浦海岸の三浦富士で実施しており、「相手目線をもつ」という研修テーマに沿った内容で企画しています。座学で相手目線を学んだ後、登山を通してその行動を実践し、帰ってきたら相手目線での行動を言語化して評価し合うという流れです。

齋藤さん:研修では4名ほどのグループに分かれ、コースを自分たちで決める話し合いや自主性が求められるワークを行います。また、ランドマークで写真を撮って本部に報告するなど、報連相(報告・連絡・相談)を学ぶミッションも組み込んでいます。登山というアクティビティを通じて、思い出を作りながら学べるプログラムです。

▲新人研修の様子。自然に囲まれながら、みんなで記念撮影!

── 山という環境が、研修にどのような影響を与えていますか?

佐々木さん:山では不測のトラブルが起きやすいので、報連相を学ぶには絶好の場だと考えています。以前の箱根での研修では、あえて山頂に行くと制限時間内に帰れないシナリオを設定し、リーダーシップや責任ある行動を問うワークを行っていました。

齋藤さん:「指示されたからといって盲目的に進むことは、本当に正しい行動なのか?」という問いを投げかける内容でしたね。ただ、走ることで制限時間内に帰ってくる世代がどんどん出てきてしまい…(笑)。それはそれで学びがあるとは思いますが、安全面を考慮し、現在の仕組みに改良しています。

── 新卒メンバーにとって印象深い経験になりそうですね。

佐々木さん:はい、非常に記憶に残るようです(笑)。中には「研修での登山が不完全燃焼だったので、もっと楽しみたい!」とトレッキング部に参加してくれる新入社員もいます。

齋藤さん:リモートワークが進む中、直接顔を合わせる機会が減っていますが、この研修を通じて、登山をきっかけにチームとしての絆を深めてくれればと思います。研修での経験を活かして、ぜひトレッキング部にも参加してほしいですね。

社員の心身の健康が健全な会社経営の礎

── 登山部の活動が仕事に活きていると感じる瞬間や出来事はありますか?

齋藤さん:私は人事という仕事柄、社外の方に会社の説明をする機会が多いのですが、トレッキング部の話をすると、非常に関心を持っていただけます。会社の雰囲気をポジティブに捉えていただくきっかけとなり、そこから応募につながった経験もあります。採用や集客の観点から見ても、トレッキング部の活動は説明のしがいがありますね。

佐々木さん:業界的にもリモートワークが進んでいる中で、社内コミュニケーションの取り方を気にする求職者の方も多いんです。こういったコミュニティや活動は、YAZらしさを表現するうえで大切な要素だと思っています。

── 今日のお話を通して、会社主体で社員の健康や運動について考えている点が、すごく印象的でした。

佐々木さん:毎年「健康意識調査」を社内で実施していますが、運動不足を自覚している社員が非常に増えています。そのため、公認部活動制度以外にも、当社では「歩数ポイント制度」を実施しています。社員に毎月の歩数を報告してもらい、年間の合計歩数をもとに表彰を行う仕組みです。任意参加ですが、表彰だけでなく健康支援商品のプレゼントも贈っています。

齋藤さん:加えて、年に一度「YAZフェス」という運動会を開催しています。全社員で体育館を貸し切り、スポーツを楽しんだ後にBBQを行うなど、社員同士がリフレッシュできるイベントです。

佐々木さん:こうした取り組みの成果もあって、YAZは2019年から「健康経営優良法人」の認定を取得しています。「歩数ポイント制度」や登山部の活動がこの認定に貢献しているんです。

齋藤さん:エンジニア職という業界特有の課題として、メンタル面の不調で退職される方が多いという現実があります。こうしたトラブルを減らし、心身ともに健康に働ける環境を目指した成果が「YAZトレッキング部」につながっているんだと思います。

佐々木さん:やっぱり、健康でなければ長く働き続けることは難しいですからね。ITの力が強くなっている今の時代だからこそ、企業は社員の心と身体の健康をより一層考えていく必要があると強く感じています。

社内登山へ行こう!仲間と楽しむ自然時間のススメ


自然の中でリフレッシュできるだけじゃなく、仲間との結束力も深まる「登山」。同じ景色を見て、同じ達成感を味わうことで生まれる一体感は、心の距離を縮め、信頼や絆を育んでくれます。仲間との絆が深まることで、日々の仕事にも思わぬ変化が生まれるかもしれません。

「次の週末は、会社の仲間や友人と一緒に登山をしてみようかな?」

そう思った方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。