テントを手に入れて、実際に山で泊まってみようと思ったとき、ふと「ちゃんと張れるかな」「どうやって張ったらいいんだろう」と疑問が浮かんでくるはず。ここでは、テントを設営する際に知っておきたいハウツーをご紹介。設営だけでなく撤収や、雨天時のコツなどもお届けします。
「山小屋泊・テント泊を楽しむコツとスキル|初心者のための基礎知識」記事一覧
2022.12.30
YAMAP MAGAZINE 編集部
まず、テント場に到着したらどこに設営するかを決めましょう。どのようなことを考えて設営場所を選んだらいいのか解説します。
地面が斜めになっていると、テント内で作業がしにくいだけでなく、寝ているときに片方に滑り落ちて安眠できないことも。テント場の端の方だと斜面にかぶっていたり、段差があったりと条件がよくないこともあるため、可能な限り、自分のテントサイズに合った平坦な場所を探してみましょう。
テントの中にマットを敷いたとしても、石や木の根があると就寝時に背中に当たって不快だったり、痛い思いをしてしまいます。テントを設営する前にできるだけ取り除くことで、快適なテント生活を実現できます。なお、テント場が国立公園や保護区の場合などは特に、木を折ったり石を元あった場所から移動したりといった自然にダメージを与えるのはNG。テント場のルールに従いましょう。
テント場は移動のための道が確保されていることがほとんど。テント場内をどのように人が動くのかを考えながら設営位置を決めましょう。
テント場のように草がなく地面が剥き出しになっているところは、雨が降ると水が川のように流れることも。平坦だからといって、水が集まるような場所にテントを張ってしまうと、気づいたら水溜りになっていた!というリスクもあるため、地面の乾き具合や周囲の傾斜など地形をよく見極めるのも大切です。
テント場に到着するのが遅くなると、必然的に選択肢は限られてしまいます。快適なテント泊を楽しみたいのであれば、できるだけ早めに到着し、受付を済ませ、設営に取り掛かるのがおすすめです。なお、コロナウィルスの拡大以降、テント場でも山小屋同様に予約が必要なところが増えたので、計画段階での事前の確認はお忘れなく。
設営場所を決めたら、早速テントを張りましょう。ここで注意。はじめて買ったテントは、必ずテスト設営をしてから本番の山行に臨みましょう。設営方法をしっかり頭に入れておくことはもちろん、ペグが足りなかったり、ガイラインが本体に取り付けられていないなど、現場で混乱しないためにも事前にチェックしておく必要があります。
設営の手順ですが、ここではもっともオーソドックスな「自立式のダブルウォールテント」でのケースをご紹介します。
設営場所にグラウンドシートを広げます。おおよその設営範囲が目視できることと、このグラウンドシートの上で作業をすることで、テントが汚れるリスクを軽減できます。
インナーテントを広げ、入り口を確認し、設営したい方法に向けて置きます。入り口が風下になるようにするのが基本です。
折り畳まれているポールを組み立てます。長く伸びるので、周囲の人やテントに当たらないよう先端に注意してください。
インナーテントのスリーブ(筒状の通し穴)にポールを差し込みます。テントの種類によってはフックに引っ掛ける形式もあります。
2本のポールがそれぞれ対角線のスリーブに通ったら、ポールの片側の末端をインナーテントの角にあるリングにはめて、もう一方の端もリングに押し込み、立ち上げます。
テントが立ち上がったらグラウンドシートに合わせて配置し直し、フライシートをかぶせます。フライシートとインナーテントには接続するパーツがあるので、前後を間違えないように取り付けます。
テントを固定するために、本体の四隅(もしくはサイドに2か所など)をペグダウンします。周辺にある石などをハンマーとして活用するといいでしょう。
耐風性を高めるためにガイライン(細いロープ)を引き、こちらもペグダウンします。このときガイラインがテント中央からポールと同じ方向にまっすぐ伸びるようにペグの位置を決めることが強度を高めるコツ。フライシートの入り口側中央もペグダウンし、前室のスペースができれば完成です!
テントを設営するときに天気がよければいいのですが、雨や風に見舞われてしまうというケースは多々あります。そんな条件がよくないシチュエーションでの設営方法のコツをご紹介します。
雨や風がどちらから吹いているか確認し、風上に立って作業をするとスムーズです。テントが風でなびいても風上にいれば自然と広がります。また自分自身が雨風を受けにくいのもポイント。
設営方法自体は通常と変わりませんが、いかに早く張れるかが大切。あまりテントの設営に不慣れだと余計に時間がかかり、テント内部が濡れてしまいます。スムーズに設営できるよう練習しておくのがベター。そして、テントが立ち上がり、フライシートをかけたら荷物を前室に置きましょう。それからペグダウンをし、レインジャケットを脱ぎ、自身もテントの中に避難します。
濡れた装備やウェアのままテントに入ってしまうと、テント内が濡れてしまうだけでなく、バックパックから出した衣類や装備も濡れてしまいます。前室に置いたバックパックから荷物だけを取り出し、テント内に入れ、自身も濡れた服は脱いでからテント内に入ります。
バックパックにはレインカバーが付属しいているものもありますが隙間も多く、防水力は高いとは言えません。そこで、ドライバッグと呼ばれる密閉されたスタッフバッグに装備を入れることで、濡れから守ることができます。とくに防寒着のダウンや寝袋などはドライバッグに入れるのが必須。濡らしてしまうと保温力がなくなり、安眠できないどころか低体温症のリスクが発生してしまいます。
テントをバックパック(ザック)の一番下に入れてしまうと、設営の時にすべての荷物を広げなければなりません。設営時に雨が予想される場合、テントはバックパックの上部、もしくは取り出しやすいジッパーのあるコンパートメント(荷物を入れるスペース)に入れるといいでしょう。
ドライバッグは乾いたものを濡らさないだけでなく、濡れたものの水分を他に広げないという使い方もあります。濡れたテントを撤収するときに、予備のドライバッグがあると安心。バックパック内で他の荷物を濡らすリスクを抑えられます。
テントを撤収するときのプロセスについて、装備のパッキングや撤収の手順など、覚えておくと便利なコツも交えてご紹介します。
テントを撤収する前に、テント内の装備をバックパックに収納します。天気がよければテント外で作業をしてもいいのですが、雨天時のことを想定するとテント内で収納ができるようになっていると安心です。
基本的にテントの撤収は設営の逆の手順で行えばいいのですが、結露や濡れ、汚れをきれいに落としてから収納するのがポイントです。
透湿性のある素材とはいえ、気温差や室内の湿度によっては、フライシートの内側が結露するこ
ともあります。また、夜に雨が降り、水滴が残っているのであれば、ドライシートやタオルなどで拭き取りましょう。もしくは、時間があり、天候がよければ、他の登山者の迷惑にならない範囲で、デッキや木などを活用して乾燥させるといいでしょう。
ペグを抜き、テントを起こし、裏側を確認します。グラウンドシートを敷いている場合は濡れていることはほとんどないと思いますが、結露や雨の侵入がある場合は拭き取り、乾かします。
テントを持ち上げ、ポールの破損に注意しながら内部に入り込んだ砂やホコリを出します。近くにいる登山者に当たらないよう、周囲を確認して行います。フライシートとインナーがきれいになったらスタッフバッグに入れてバックパックに収めます。
ペグの汚れはできるだけ落とします。落とし切れない汚れがテントや他の装備に移らないよう、チャック付きのポリ袋などに入れて収納します。
設営と撤収の手順やハウツーについてご紹介してきましたが、そのなかでもNGとされることをあらためて整理しおきたいと思います。
テント場には、自分たち以外にも登山者がいます。テントポールを伸ばす際に人に当てたり、通路を妨げて設営したりと、迷惑になる行為は避けましょう。
実際に山の上で設営に必要な装備が足りなかったり、設営方法がわからず困ってしまうのは避けたいもの。「買ったままで持ってきた」というのはリスキー。事前に開梱し、設営の練習をして手順を確認しておきましょう。
設営時にはテントを取り出す際に他の装備を余計に広げないためにも、バックパックの上部やジッパーつきのコンパートメントに収納するのがおすすめ。基本的には、取り出しにくいバックパックの奥に収納してしまうのはNGです。
結露を拭かなかったり、濡れたままにしておいたりすると水分がにじんで他の装備を濡らしてしまうリスクがあります。早朝の行動や雨天などでなければ、できるだけきれいにして収納するのがおすすめです。
事前のパッキングはもちろん、設営と撤収に大切なのは、どれほどテントの仕組みを理解し、組み立てや収納の手順がわかっているかどうかです。「このポールはどこに入れるんだっけ」「ペグは何本必要なのか」など、現場で困らないためにも事前に練習や確認をしておくことが必要です。また、雨天時の設営と撤収について、イメージトレーニングをするのもよいでしょう。